「小さないのち」日々のささやき--姑とお雛さま
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坂下裕子の不定期日記 日々のささやき
小さないのちの取り組み
立石由香から事務局だより
Pfizer
2017年03月17日
姑とお雛さま
姑とは、難しい関係になり、修復が困難な時期があった。
あゆみを病気で亡くしたあとのこと。
お互いにつらかったからだ
と思えるようになったのは、最近だ。

厳しかった姑が、年をとり、体も弱り、
「ぼけてきたんちゃう?」と身内が言うようになり
私は、姑のお雛様のことが気になりだした。
姑が大事にしていた、七段飾りのお雛様。

私は触れたこともないので、言い出しにくかったが
「お雛様は、もう出さないんですか?」
と尋ねてみた。
すると、「もうないのよ。あげたのよ」
という言葉に続き、衝撃的な事実が語られた。

  自分の代わりに大事にしてくれる人に、もらってほしくなった。
  そのことを知人に相談したら、
  「いくらで買い取らせてもらえますか?」と言う人物が現れた。
  売り物にされては困ると思い、即座に断った。
  後日、「ほしいです。大事にします」という人が訪ねて来たので、
  「大事にしてあげてくださいね」とその女性に託した。
  ところが、託した相手から例の業者の手に渡ったことを知った。

この話に、言葉を失った。
そして後悔した。
もっと早くに「私がほしい」と言っておけばよかった。

しかも姑は、
娘を亡くし、もう女の子のいない私には
お雛様は差し出せないと、
思いとどまっていたらしい。

姑と私、向かい合ったまま、沈黙は続いた。
ぽつりと、姑が言った。

「売られて行ったかもしれないけれど、きっと、
いい人に買ってもらって、幸せになっていると思う。
私も、今はこんな体になって、動けなくなってるけど、
みんなに大事にしてもらえて、幸せに暮らせているから。」

本当に言葉は出ず、涙が出た。
姑が、寝たきりに近い暮らしになっていることを
不幸と思っていないことが、
驚きであり、救いだ。